念願を実現
“SIDESHOW製”というネームバリューに加え、スタイリングの完成度が抜群に良いという点でずっと気になっていたこの1/6スケールのC-3PO。ただ、やはり量産品ゆえの「もったいない」」「残念!」という部分がいくつかあります。そのあたりを徹底的に改修することにより「こんなC-3POが欲しい」という理想をカタチにすることができました。巨匠ジョージ・ルーカスは、本編に登場するドロイドのプロップ製作に関し「経年の傷み」や「道具としての使用感」を追求したといわれ、それはつまりリアリティを追い求めるが故の信念なのだろうと解釈できます。今回の作品では、劇中に登場するC-3POの「傷み」「汚れ」「劣化」といった部分を再現してみました。
以下はこの作例の解説ですが、まずはSIDESHOWの製品そのものについて触れてみます。
SIDESHOW製の素体検証
全体のシルエットは申し分なし。憎めない「アイツ」そのものです。電飾スイッチのあしらいなどは「さすがはサイドショウ!」と思わせるものがあります。可動箇所も多く、劇中のあらゆるポーズを再現できるのも嬉しいところ。しかし…
残念な点その1:いかにも「ゴールドにしました!」感がつよいペイント表現。遠目にみた彼は確かにゴールドです。でも、その実いろいろバックグラウンドを調べ行くと「真鍮の輝き」というワードに辿り着きます。そう、ゴールドではないんです。あと、ドギツイ墨入れも気になります。このせいで一気に「トイ感」が増してしまうんです。残念。
残念な点その2:腹部の配線表現です。ここはまさに「量産品ならではの妥協」が見て取れます。一部は別パーツで表現していますが、殆どは金型で表現されたモールドで、凝視すると独立した配線ではないことがわかります。ここでもやはりわざとらしい墨入れが気になってしまいます。
逆に言うと、不満は上記2点のみという非常に完成度の高い製品で、C-3PO立体物の中では群を抜くモノであると信じて疑いません。それでは以下、大日本工房による味付けについてご案内致します。
「それらしい」表現を追求したリペイント
電飾ギミックの保護と腹部配線のマスキングを経て、まずは下塗りのグロスブラックに。極力モールドを残しつつ、それでいてツヤを出す。さらに可動部も生かす。当工房の塗り師enoの腕の見せどころ。
銀鏡反応の後にトップコート処理が施された状態。本来は「しっかりと銀」にするところを、一部工程を省くことにより「劣化した金属」の風合いをこの時点で表現してしまいます。銀鏡のセオリーを大胆に無視し、このような「表現技法」として使いこなすのが大日本工房のウリでございます。
クリアイエローやクリアオレンジを少しずつ乗せていきます。同時に劣化表現も。
「私はどちらかというと無口なほうでして…」などと吹き替え版のセリフを思わず発したくなります。
オイル汚れや錆び、あるいは土埃や泥汚れも丁寧に表現していきます。部分的にブルー系を用いてアクセントを。
模型全般に言えることですが「ツヤのコントロール」が作品全体の善し悪しを左右します。脳内で描いた「理想の光景」が再現できるまで妥協無き作業が続きます。
腹部配線のディテールアップ
まずは「敵を知る」ための検証作業。スターウォーズ各作品、あるいはシーンによって全く仕様が異なるこの部分。「どれかひとつに絞って再現」とするよりは「それらしく雰囲気重視で」という方向性に決めるのにそう時間はかかりませんでした。
そして製品版の配線部分を大胆に削り落とします。ここは「思い切り」が肝要。
まな板の上で料理される彼。「ルーク様ぁ、ルーク様ぁ」などと唱えながら作業するとはかどります。
1mm前後のカラーケーブル各種を用います。それを編んだり束ねたりよじったり…。独立感を表現するために、お腹にペタッとせず、大小の「浮き」を設けて緻密に作業しました。
プロップでもみられる「配線を束ねている黒いやつ」をこのスケールで再現するのにひと苦労。このノウハウは企業秘密で、知ってるのは私と榎本君だけ。誰にもオシエタクナイ(笑)。
左腕の「ダメージ表現」
製品には「上腕部分から先が無いダメージ部品」が付属しますが、これも大胆に配線類を新造しました。
これがその純正部品。PVC一体成型と思しき配線の束が計4パーツ使用されています。質感・雰囲気共に残念な仕様なのですべて除去して新造工程へ。
この工程に必要なのは勇気と根気とイマジネーション。無機物なのに有機物に思える「気持ち悪さ」も追求しています。
理想の「彼」の完成
かくして完成をみた大日本工房謹製C-3POのスケールモデル。プロップに忠実なSIDESHOWの見事な完成度と、1/6スケールというコレクション製の強いサイズ、そして大日本工房の変態性溢れる改修により、SWヲタクならずともSFファンならヨダレものの逸品に仕上がりました。以下に、その勇姿をご覧下さい。